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笹幸恵
2024.12.12 17:03

『SPA!』倉山記事ーー今週は輪をかけて支離滅裂。

『SPA!』12/17号の倉山記事について。
今週も政局”居酒屋”談義に終始。
しかも支離滅裂度合いに拍車がかかっている。

まずは記事の概要を紹介しよう。
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●衆議院がハングパーラメント(絶対多数党不在議会)。
今のうちにやることをやっておかねばならない。
ただしキャスティングボートは国民が握っている。

●自民党(特に宮澤税制調査会長)の悪口。
財政政策の最新研究について紹介(自慢)。

●SNSは今、自民党の敵。
頭を下げなければ既成メディアとSNSの決戦になる。

●来年の選挙シナリオの予測。

●日本国民が臨時国会で要求すべきこと。
国民民主党「178万円の壁」への満額回答。
国民民主党は密室の談合に与することが真の負け。
自民が言うこと聞かないなら補正予算も法案も潰せ。

●大メディアが勝つか、SNSが勝つか、参議院選挙で決着となる。
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これを読んでいる全員の脳内に「?」か、
「So What?」が浮かび上がるはずだ。


今週号のお題は、あえて挙げるなら下記2点だろう。

「ハングパーラメントのうちにやるべきことをやる」
「キャスティングボートは日本国民が握っている」

ならば、やるべきこととは何か、
キャスティングボートを握る日本国民は
何をどうすればいいのか、
これが答えとして用意されていなければならない。
しかし倉山は、これに真正面から答えない(答えられない)。
自民党の悪口を散々書いて「地獄に落ちるぞ」
「頭の下げ方を忘れたのか」などとマウントを取りに行く。
さらにそこへ「大メディア対SNS」の構図を持ってくるので、
しっちゃかめっちゃかだ。

その上で後半、再び問うている。
「この臨時国会で、真にキャスティングボートを握る
日本国民はどう要求すべきか」

お、やっと来たね。

で、それに対する答えがこちら。

「国民民主党が要求する178万円への満額回答が望ましい」

問いに対応していないッ!
対応するよう修正したら、こんな具合か。
「国民民主党が要求する178万の壁に対し、
自民党が満額回答するよう、日本国民は要求せよ」

なんか、キャスティングボートを握っているなどと
大上段に構えた割にやるべきことってその程度か、
という感が拭えない。
表現だけは勇ましいけど、要するに
倉山が言っているのはその程度、ということだ。

しかも一文ごとに主語がコロコロ変わり、
それを明示しないから誰に対して何を言っているのか
さっぱりわからない。
文章の基本がまるっきりなっていない。
それどころか「SNS=国民の総意=国民民主党支持」
であるかのような前提で話が進んでいき、
国民民主を支持していない読み手からすると
前提が違いすぎて全く意味が通じない。

どうやら倉山はSNSのつぶやきが輿論だと
本気で思っているらしい(正気か)。
で、それに阿る言説を並べているだけ。
SNSに対する危機意識もなければ考察もなく、
現状はAだからAで行け、と言うのみ。
要するに目の前のことしか見えていないのだ。
想像力も欠如しているから、国家百年の計など思いもつかない。
過去の営み、それを踏まえた未来のあるべき姿に
思いが至らない。だから考察もなければ思想もない。
言論人としてはあまりに無責任。
最近よく思うけど、
「言論人」「知識人」「有識者」などという類いは、
単なる目先のヒョーロンをしてみせる「放言人」と
見なしてまず間違いがない。倉山はその筆頭だ。


今回の記事、ものすごーーーく倉山に寄り添って読解してみると、
以下のような具合だろうか。

「やるべきこと」とは「膿を出しきること」で、
その膿とは「密室談合で物事が決まる」こと。
野党をはじめとする政治家は、少数与党のうちに
その悪習を改め、議会での議論で物事が決まる、
本来の立憲主義に立ち返れ。

当の本人はマウント取りに勤しんでおり
この本丸にほとんど言及がないので、
めちゃくちゃ忖度した結果だけど。
倉山クン、これなら「地獄に落ちる」とか書かなくても
自民党批判につながるんだよ。
これならまだ意味が通じるんだよ。
編集者はそのぐらい教えてあげたらいいのに。

ちなみに、特にこれといって言いたいこともなく、
ただ文字を埋めただけの原稿はすぐにわかる。
メインとなる主張がないから、
タイトルや見出しのつけようがないのだ。
するとどうなるか。
苦肉の策として、パッと目を引く威勢のいい言葉を
並べ立てるようになる。
「自民党は死にたいのか」
「ガタガタ言うなら予算も法案も潰してしまえ」
といった具合だ。
今号の記事は、まさにそれ。

記事の中身を何とかするほうが先でしょうよ。
本末転倒です。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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